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 いやになるほど時間が長く感じた。実際にはほんのわずかな時間しかたっていなかったのだろうけれど。
 やがて先生も観念したかのように口を開いた。
「そうです。僕は本来は遠野知を名乗る身でした」
 あの夢と、同じような言葉だった。
「ずっと妹たちとは一緒にいたかったんですけどね。こんな形で再会を果たしてこんな形で愛する人と出会うなんて思いたくありませんでした」
「知は知っていて私を好きになったんでしょう?」
「ええ。わかっていましたけれど、止められなかった」
「でも、私もひなせも何も知らなかった」
 知を責めても仕方ないのに、責めるための言葉しか出てこない。そんな自分が嫌いだった。だいいち、もし先生が自分の兄だと知っていても絶対に惹かれていたに決まってる。今だって、そうなんだから。
「何も知らなかったのに、ずるいよ……」
 そこからしばらく、また嫌な沈黙が流れる。
 やがて知は私の腕を引っ張り、何も言わずに寝室に連れ込んだ。
「待って、知……」
 意図が読めなくて、いや、意図はわかっていたけれど頭の中で拒否していた。こんなこと、してはいけない。警鐘。
「実の兄だと知った以上、燃えるんでしょう?ひなせのときと同じで」
「なにを言って……」
「大丈夫です。悪いようにはしませんから」
 今の時点で十分悪いじゃないかと言おうと思ったが、やめた。それ以上に悪いことを、私たちはたくさんしてきたから。

 もう、今更なにを言っても遅いのだ。
 私に残された道はひとつしかない。

 知に抱かれるということ。それだけ。

 知の指や舌の動きにはいつまでたっても慣れることはなくて、いつも心まで蕩かされてしまう。でも、それにしても今日は特別だった。いつもと明らかに自分の身体が、違う。
「ほら。やっぱり」
 私のすっかりぬかるんだそこに指を這わせ、知は笑った。いつになく意地悪な笑みだった。
 そうだ。私は知の思惑通り、燃えてしまっていたのだ。実の兄に抱かれる、という背徳感に。
 やがてそこに知の舌がちろちろと近づいてきて、一番敏感な突起を捕らえると、私は回りのことなど考えずに、反射的に声を上げていた。
「っああ……!知……!」
「そんなに大きい声出していいのか?外に聞こえても……」
「いいの、お願い、もっとして」
 はしたないとわかっていても、止められない。いや、知だからそういうところも見せられるんだ。
 今度は指でそこを貫かれる。でも、指にしては圧倒的な質量。
「待って、指何本……」
「3本」
 しれっと答えてのける知が憎らしくもあるが、身体のほうはちゃんと反応していた。指3本なんてひなせでも十分きついのに、知の指となると壊れそうになる。
――私、今、ひなせと比べてた?
 今までなかったことだった。ひなせとのことはできるだけ考えたくなかった。ひなせのことは妹としては好きだけれど、毎夜のように私を思いのままに弄り回すひなせは怖い。考えたくもなかった。それなのに。
――やっぱり私は板ばさみを楽しんでいるんだ。
 心の中ではひなせを弄んでいるんだ。ごめん、ひなせ。
 そして知の大きくなったそれを受け入れ、全て解き放たれた瞬間。
 私は快楽の向こうにある結論を見つけた気がした。
 でも、それを実行に移すまでには時間がもう少し必要。

 私たちがこの学校を卒業するまで。






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